- HOME
- 技術
- 4bit-CPU TD4
- [TD4] TD4について
[TD4] TD4について
TD4関連記事は4bit-CPU TD4で管理しています。
はじめに – なぜ今CPUを自作するのか
皆さんは普段使っているPCやスマホの中でどんな処理が行われているか、考えたことはあるでしょうか。高性能なコンピュータが当たり前の時代だからこそ、その根幹を支えるCPUの仕組みを知ることには大きな価値があると考えています。今回は自作CPU「TD4」の製作に挑戦する理由と、その魅力について述べたいと思います。
TD4とは
TD4とは「CPUの創り方」という書籍で紹介されているCPUの名称です。TD4の構成はとてもシンプルで、RAMはなく、当然ながら割込み機能もありません。命令フェッチ→デコード→実行→ストアをクロックに合わせてひたすら繰り返す素朴な機械です。現代のCPUと比べれば非常に単純ですが、コンピュータの基本原理を学ぶには最適な教材といえます。
【スペック】
- 4ビットレジスタ×2
- 4ビット出力ポート(LED)×1
- ALU:4ビット加算
- クロック:1Hz / ステップ動作
- 4ビット入力ポート(スイッチ)×1
- 8ビットROM(スイッチ)×16アドレス(最大)
- 命令種:13
TD4が完成したら「カウントダウンタイマのプログラムの実行」を試して、実際にCPUとして動作している様子を観察してみたいと思います。基本スペックやCPU構成要素の実装方法など、「CPUの創りかた」は、パタヘネ本の次に必読の一冊に分かりやすくまとめられています。コンピュータアーキテクチャに興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
(ハードウェアエンジニア向け)TD4の設計思想
この仕様から垣間見えるTD4の設計思想は「最小構成での動作実証」にあります。4ビットという極めて限られたデータ幅ながら、現代のCPUの基本機能である「演算」「データ転送」「条件分岐」「入出力制御」の全てを含んでいるのは驚くべきことです。
アーキテクチャ的には、TD4は「RISCの原点回帰」とも言えます。命令セットが少なく、各命令の機能が明確で単純なのは、1980年代に提唱されたRISC(Reduced Instruction Set Computer)の基本思想と通じるものがあります。実際、命令の構造(上位4ビットが命令コード、下位4ビットがオペランド)は、固定長命令形式を採用する現代のRISCプロセッサにも通じています。
また、命令セットの選択にも深い洞察が見られます。データ操作の基本となるMOV命令、算術演算のADD命令、プログラムフローを制御するJMPとJNC命令、そして外部とのインターフェースとなるIN/OUT命令。これらはコンピュータが機能するための最低限の命令セットと言えます。特にJNC(Jump if Not Carry)のような条件分岐命令が含まれていることで、単純な線形プログラムだけでなく、条件処理やループ構造など、より複雑なアルゴリズムを実装できるようになります。
どのように製作する?
TD4はディスクリート部品(個別の電子部品)で地道に作り上げていくため、大きなユニバーサル基板上にダイオードや汎用ロジックICをひたすら並べていきます。Google画像検索で「CPU TD4」と入力すると、目が痛くなるほどの複雑な配線画像が飛び込んできます。この細かい手作業を何ヶ月も続けることになるため、正直かなりの労力が必要になりそうです。今からとっても気が重いです。
回路図は以下です(こちらのページから拝借しました)。右上がROM周りで、手付けだと気が遠くなりそうです。部品を置き換えて少しでも効率的に作れないか検討中ですが、このような試行錯誤も自作の醍醐味かもしれません。完成した回路が一発で動くことはまずないでしょうが、「CPUがなかなか動かなくて…」という悩み、かなりシブいと思います。

TD4から学べること
ディスクリート部品で作るTD4の大きな魅力は、CPUの内部動作が「見える化」されることにあります。現代のCPUは超高集積でブラックボックス化していますが、TD4では各部の信号の流れがLEDの点滅として可視化され、命令実行の様子を目で追うことができます。コンピュータサイエンスの教育的観点からも非常に価値があると思います。
また、実際に手を動かしてハンダ付けをしていく過程で、回路図の理解や論理的思考力も自然と身につきます。問題が起きた時のデバッグ作業は、プログラミングと似た「論理的なトラブルシューティング能力」を鍛えてくれるはずです。
製作に至った経緯
TD4はCPUとしての実用性はゼロです。数千円でGHz動作のCPUが手に入る時代に、わざわざ自作するメリットなんて全くありません。では、何故作るのか?それは「俺はCPUを作ったところがある」という一生有効な心の肩書き(?)を手に入れるため……というのも確かにありますが、主に以下の2点が理由です。
1点目は、「CPUの創り方」の 著者の言葉に感銘を受け、CPUアーキテクチャを知りたいと思ったためです。
…えーと、CPUに限らないんですが、仕組みが解った方が世の中とか人生は楽しいです。そう思います。だからのこの本を書きました。この世の中にはブラッ クボックスがたくさん存在します。そして全てのブラックボックスを理解するのは不可能です。が、とりあえずあなたにとってのブラックボックスが1つ減った ならば、私はとても嬉しいわけです。
CPUの創り方
仕組みが分かると面白いです。何か新しいことに挑戦したいと考えていた自分には、著者のこの言葉がとても響きました。この本は電子工作界隈ではカルト的な人気があり、一時のブームは過ぎたものの、今でもTD4関連のWEBページが生まれては消えていくのを目にします。このブログも、そんな情報の一つとして誰かの参考になれば嬉しいです。
2点目は、映画「イミテーション・ゲーム」を観てコンピュータ製作に純粋なロマンを感じたからです。この映画は、第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読に挑んだイギリスの数学者アラン・チューリングの実話を基にした物語で、コンピュータ科学の基礎を築いた偉人の苦悩と情熱が描かれています。ストーリーも素晴らしいのですが、何より暗号解読装置の姿に歴史的なロマンを感じました。ちなみにエニグマ暗号の鍵は「159,000,000,000,000,000,000通り」もあるため、TD4はおろか現代のスパコンでも総当たりでは太刀打ちできません。どのようにしてエニグマ暗号の解読に至ったのか?については是非映画をご覧ください。

今後の動き
次回はTD4の製作計画を立てたいと思います。実際に作りはじめるのはいつになることやらですが、今年中には完了させたいと考えています。まったりいきます。よろしくお願い致します。