サイト運営にあたり著作権周りを気にしています。例えば本サイトでは理工学系やソフトウェア系の記事を書くことが多くなりますが、書籍やWEBから式やソースコードを引用したいケースがあります。そのため引用にあたってどういった作法が必要なのか、そもそも引用して良いのかなどを調べました。AIなどの台頭もあって法律が追いついていない分野かと思いますが、できる限り理解に努めたいと思います。
目次
著作権は文化庁が管轄している
著作権は解釈が難しいため噛み砕いて説明してくれているブログなどもありますが、まずは一次情報にあたりたいと思います。著作権法は国の法律で管轄は文化庁です。そのためまずは文化庁が管理している著作権のページを確認します。以前はQ&Aや学生向けのページなどがあったはずですが、いずれもリンク切れになっていました。
施策・事業一覧のリストに著作権に関する教材・講習会 | 文化庁というページがありました。ここにQ&Aや学生向けのテキストやマンガ等がまとめられていました。ただ、Q&Aひとつ見ても量が膨大です。ここからサイト運営に必要な情報をピックアップしていくのは現実的ではありません。そこで特定のサイトのみを検索対象とするGoogle検索の機能を使ってみます。
Google検索で「site:https://www.bunka.go.jp/ 検索したいワード」とすることで、文化庁のページ内で検索をかけることができます。例えば “引用” で検索してみると該当ページが一覧されるほか、著作権テキスト(PDFファイル)内も検索対象となっていました。これは嬉しい誤算です。このやり方で気にしている項目を確認していきます。
引用の考え方
著作権法(第32条) 引用には以下の記載があります。基本的に公開された著作物は「引用」して利用することができるという考え方です。引用の必然性と主従関係の明確化については言うまでもありません。
[1]公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。(注5)[2]国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。
(注5)引用における注意事項
著作物が自由に使える場合 | 文化庁
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
要約について
著作物を読まなくても主要な部分を認識させる要約は違反となる可能性があるため注意が必要です。例えば要約については、
要約は、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物のことをいいますが、この要約を行う行為は、一般に翻案権(第27条)が働く行為とされており、著作権者の了解なしにはできません。ただし、ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば、著作権者の了解は必要ないと考えられています。
文化庁 | 著作権Q&A
とされています。翻案権は聞き慣れない言葉ですが、著作物に創作性を加えて別の著作物を作る行為で、この場合には著作権者の了解が必要です。“ごく簡単に内容を紹介” と “要約” との具体的かつ定量的な違いが不明ですが、著作権に関する過去の判例から確認していくほかなさそうです。
3つの記述方法 (直接引用、ブロック引用、間接引用)
引用と参考文献の書き方(近畿大学中央図書館)によると、執筆時の引用には3つの記述方法があるとされています。いずれも書籍等でよく見るスタイルで、用途や文脈によって使い分けることで効果が望めそうです。いずれの場合も出所の明示は必要で、直接引用、間接引用の場合は脚注などを使って表現するようにします。
直接引用
短文を引用したい時に用います。
引用した著作物本文の内容は変更しません。
例)
ブロック引用
長文を引用したい時に用います。
引用した著作物本文の内容は変更しません。
例)
間接引用
短文や長文を自分で要約したい時に用います。
上述した通り、引用した著作物本文の内容を自分で改変することになるため、程度には注意する必要があります。
例)
画像の引用について
文章の引用と同様、公開された著作物ならば引用可能です。画像と言っても “撮影した写真” や “イラスト” は著作者への確認が必要です(著作権侵害をしない!ブログでの正しい引用と転載の方法&画像の利用方法より)。またサイトのキャプチャは転載ではなく引用にあたるようです(サイトのキャプチャ(スクリーンショット)を使うのは著作権上OKなのかをざっくりとより)。
画像は直リンク(src=にオリジナルの画像パスを設定)ではなく、自身のメディアサーバーにアップロードしたものを掲載するようにします。またalt属性は通常の画像と同じく画像の説明文で良いとのことです(画像引用時の出典の書き方!直リンクは何でダメ?ブログのマナーの話より)。出典には引用元へのリンクを貼っておく必要があります。
画像の改変は基本的に禁止ですが、合理的な理由での縮小は認められているようです(著作権法20条2項4号)。ただ一部拡大・トリミング、モザイクなどの改変は不可で、文字は欄外にキャプションとして記載しなければならない点に注意です(アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイントより)。
出所明示の方法
出所明示の方法は以下のように説明されており、要件さえ満たされていればスタイルに規定はありません。学会などでは引用のスタイルが指定されているため、本サイトでも記載方法を統一したいと思います。なお、ここで記載する明示方法は直接引用、ブロック引用、間接引用のいずれの場合であっても共通して使用するスタイルとします。
それぞれのケースに応じて合理的と認められる方法・程度によって行われなければならないとされていますが、引用部分を明確化するとともに、引用した著作物の題名、著作者名などが読者・視聴者等が容易に分かるようにする必要があると思われます。
文化庁 | 著作権Q&A
書籍引用の明示方法
学生時代に所属していた応用物理学会の執筆要項を参考にします。
執筆者:誌名(略名),巻,ページ,(年)の順に書く.巻数はゴチックにする.雑誌名の省略法については,LTWA (ISO 4) を参照されたい.英文の単行本の題名はイタリックとする.講演論文集には,開催地・開催年,出版社(出版元)・出版地・出版年を必ず記入する.書き方は次の例にならう.
(例)
機関誌『応用物理』 執筆要項 | 応用物理ONLINE
- 1) 戸田太郎: 応用物理 75, 221 (2006).
- 2) H. Yamamoto: Jpn. J. Appl. Phys. 45, 446 (2006).
- 3) 久保宏: 材料科学, p. 101 (山田書店, 1979).
- 4) T.S. Moss: Optical Properties of Semiconductors, 2nd ed., p. 71 (Butterworth Scientific, London, 2006).
- 5) F. Simodet and D. Kubick: Proc. 3rd Int. Conf. Secondary Ion Mass Spectrometry, Budapest, 2005, p. 102 (Springer-Verlag, Berlin, 2006).
他サイトへのリンクを張る行為について
著作権とは直接関係ありませんが気になっていた点だったため調べてみました。本サイトでは他サイトへのリンクを貼ることも多いですが、そもそもリンクするのに許可が必要なのか調べたところ、リンクを張るのに許可は必要か?に説明がありました。結論としてはリンクを張るのにサイトオーナーの許可は必要ありません。WWWの発明者であり、現在W3Cのディレクターであるティム・バーナーズ=リーは以下のように主張されています。
「リンクは著作権を侵害する」
「リンクには対価を求めることができる」
「リンクはプライバシーの侵害になる」これらの3つの意見は誤解であり、以下に挙げる原理に基づかなければ、「ハイパーテキスト」の世界は成り立たない。その原理とは、
「ほかのサイトにリンクを貼る前に許可を求めなければならない理由はない」
リンクを張るのに許可は必要か?
「言論の自由がなくならない限り、『参照されない権利』は認められない」
「公開された文書にリンクを張ることは、プライバシーの侵害ではない」
これがインターネットの本来あるべき姿ではありますが、リンク先のサイト制作者の名誉が棄損されたり、信用が害されたりするようなリンクの張り方をすると違法となるため良識的な範囲でリンク管理する必要があります。
以上です。