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[TD4] 部品集め完了
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秋葉原の電気街で部品を集めてきました。秋月電子・千石電商・マルツで大体揃いますね。前回の記事で紹介した汎用ロジック等と合わせて、全部品収集完了です。

秋葉原での部品調達
前回は自宅近くの「サトー電気」で部品を集めましたが、今回は秋葉原まで足を伸ばしました。平日の午後に訪れたのですがそれでもそれなりに人が多く、特に秋月電子の店内は賑わっていました。秋月電子は秋葉原駅電気街口から徒歩5分ほどの場所にあります。店内は電子部品だけでなく、工具や測定器、基板など様々な商品が所狭しと並んでおり、特に今回のようなCPU自作に必要なロジックICやユニバーサル基板は品揃えが豊富です。同じ路地にある千石電商にも行きましたが、こちらは秋月とは少し異なる品揃えで、特に産業用途の部品が多い印象でした。マルツは少し離れた場所にありますが、品揃えの幅が広く、他店で見つからなかった部品を探す際には重宝します。
代替品の購入
予算とリードタイムの関係で以下2点の部品は代替品を購入しました。
ダイオードネットワーク D9-1C
設計時採用品:D9-1C
代替品:DN9-1C
前回の記事でD9-1Cはチップワンストップで最安¥204/個とお伝えしましたが、某電気屋さんで¥100/個を発見しました。ROMのマトリックス部で使う逆流防止用ダイオードなので16個必要なため、単純計算で¥1,600ほど節約できることになります。ただよく見ると型番がDN9-1Cであることに気付きました。販売代理店HPを見てみたところ、どうやら正式な代替品のようです。こちらのデータシートを確認しても、性能や品質に影響のある違いは見当たりません。むしろコスト面では大きな助けになりました。

ダイオードネットワークは、複数のダイオードを1つのパッケージにまとめたものです。TD4のROM部分では、プログラムデータを保持するためのマトリクス状の配線に使用します。通常のダイオードを個別に使用することもできますが、配線が複雑になりやすく、作業効率も悪くなります。このネットワークICを使うことで、配線数を大幅に減らせるだけでなく、信頼性も向上するという利点があります。
ユニバーサル基板 ICB-98GU
設計時採用品:ICB-98GU
代替品:ICB-96GU×2
ICB-98GUは秋月電子にも千石電商にも無かったためほとんど諦めていましたが、最後に向かったマルツで発見しました。ただ1枚¥4,350と予想以上に高額で悩んでいたところ、その隣には98GUをほぼ2分割した形の96GUが¥970で販売されていたので、こちらを2枚購入することにしました。基板を重ねて使えるようにピンヘッダーも購入しましたが、並べて使うほうが作業しやすいかもしれないと考えています。ついでに格好いい赤い基板も購入しておきました。書籍(CPUの創り方)の表現を借りれば3倍性能が良いはずです。なお、ICB-98GU/96GUは画像の通り縦に走る共通パターンが予め配置されています。ここに電源・GNDをそれぞれ割り当てることで配線量を大幅に減らすことができます。TD4ほどの作業量になるとこの仕様はほぼ必須といえます。

その他の部品購入
ブザー
音声出力用に自励式のTMB-05というブザーを採用しました。自励式は素子内に発振回路を内蔵しているため、他励式のように別途駆動信号を生成する回路が不要で扱いやすいのが特徴です。定格電圧5V、平均消費電流(Max)30mAととても使いやすいです。少し価格は高めでしたが、後々の手間を考えると良い選択だったと思います。

(ハードウェアエンジニア向け)ブザーの動作原理とTD4の拡張例
電子ブザーは大きく分けて「自励式」と「他励式」の2種類があります。
自励式ブザーは内部に発振回路を持っており、電源を供給するだけで音が鳴ります。さらに細かく分けると、「電磁式」と「圧電式」があります。電磁式は小型のスピーカーの原理に近く、磁石とコイルの相互作用で振動を生み出します。一方、圧電式は圧電セラミックスの変形を利用して音を発生させます。今回採用したTMB-05は圧電式自励ブザーで、電子的なノイズが少なく、消費電力も抑えられるという特徴があります。
他励式ブザーは内部に発振回路を持たず、外部から特定の周波数の矩形波などを入力する必要があります。音程を自由に変えられるという利点がありますが、駆動回路が必要になるという欠点もあります。
今回はキッチンタイマーのブザー用途、すなわちON/OFFの2値しか扱いませんが、TD4のような4bitコンピュータで音楽を演奏するプログラムを考えてみる面白いです。他励式ブザーや追加の発振回路が必要になりますが、例えばOUT命令を使って特定のビットパターンを出力ポートに送り、その値に応じて異なる音程を鳴らすこともできます。限られた命令セットと4bitという狭いデータ幅の中で、いかに効率的に音楽データを表現するかというのも創造性が掻き立てられます。単純なメロディであれば、各音符を2bitで表現し(低音・中音・高音・休符など)、1バイトで4つの音符を格納するという方式が考えられます。こうした制約の中での工夫こそが、レトロコンピューティングの醍醐味といえると思います。
コンデンサ
クロック生成用の無極性電解コンと普通の電解コンデンサを購入しました。後者には音響用グレードを選んでみました。音響用コンデンサは一般的なものと比較して、ヒステリシスの歪みが少なく、インピーダンスも小さいという特徴があります。正直なところ、今回のデジタル回路では性能差はほとんど体感できないでしょうが、見た目の格好良さに惹かれて選びました。

リード線
電源用にAWG24の赤、GND用にAWG24の黒、そして信号線用にAWG28の紺色を購入しました。信号線はもう少し細いものも考えましたが、取り回しやすさと耐久性のバランスを考慮してAWG28にしました。細すぎると作業中に断線するリスクもあるので、この選択で良かったと思います。
AWG(American Wire Gauge)という規格は、数値が大きくなるほど線径が細くなるという仕様です。一般的に電子工作では電源ラインにはAWG20〜24、信号線にはAWG26〜30が使われることが多いです。また、配線色も考慮すべきポイントです。特に多数の配線が必要なCPU製作では色分けルールを徹底することで、デバッグ時の効率が格段に上がります。例えば電源は赤、GNDは黒、クロック信号は青、データバスは緑、アドレスバスは黄色、といった具合に統一すると、見た目も美しくトラブルシューティングも容易になります。と言いつつ、TD4は非常にシンプルな配線になるため今回は3色としました。

部品選定の振り返り
TD4製作に必要な部品をすべて揃えてみての教訓です。まず、部品選びの際は「入手性」を最優先すべきだと感じました。どんなに理想的な部品でも入手できなければ意味がありません。特に今回のようなレトロなCPU製作では既に生産終了している部品も多くあります。ネットや店舗を回るのも時間の限界があるため、ある程度探して見つからなければ代替品を検討すると良いと思います。
実際、電子部品の世界では「EOL(End Of Life)」という言葉がよく使われます。これは製造終了を意味し、特に古いロジックICなどは徐々にEOLとなっています。例えば、オリジナルの74シリーズはほとんど生産終了していますし、74LSシリーズも徐々に入手困難になりつつあります。代わりに74HCや74HCTシリーズへの移行が進んでおり、これも時代の流れの一つです。このような状況の中で部品を選ぶ際には、単に「今入手できるか」だけでなく、「将来的にも入手できそうか」という視点も重要です。例えば複数のメーカーから供給されている汎用品は比較的安心ですが、特定のメーカーのみが製造している特殊な部品は、そのメーカーの方針変更一つで入手不能になる可能性があります。
次にに「作業のしやすさ」です。例えば基板は少し高くても使いやすいものを選ぶほうが、長い目で見ると時間の節約になります。作業時間も立派なコストの一部と考えれば、多少高価でも適切な部品を選ぶことの重要性が理解できます。今回購入したICB-96GUも共通パターンが予め配置されているものですが、より安価な単純基板だと作業量が爆発的に大きくなってしまいます。
特に初心者の場合、作業のしやすさは成功率に直結します。例えば、狭ピッチのSMD部品よりも足の間隔が広いDIPパッケージの方が圧倒的に扱いやすいですし、温度に敏感な部品を使うとはんだ付けの難易度が格段に上がります。また、部品の物理的な配置のしやすさも考慮すべきポイントで、たとえばICソケットを使用することで、万が一の故障時にICの交換が容易になるだけでなく、はんだ付けの熱からICを保護するメリットもあります。